当院にも多くの強迫性障害の患者さんが治療のために通院されています。
強迫性障害とは、不安障害の⼀種であり、強迫観念と強迫⾏為(確認⾏為)という2つの症状で構成されます。観念とは、どうしてもこうあらねばならない、本当にやるべきことをやれていただろうかなどの考えが浮かんできてそれを振り払えなくなってしまうものです。このような強い観念が不安とともにわいてくるため、その不安を取り除くための何らかの儀式的⾏為を⾏わないといけなくなるのですが、これが強迫・確認⾏為です。非常に特徴的なのが、患者さんは⾃分の強迫性について「なぜこんなばかばかしいことをしてしまうのだろう」と不合理に感じ違和感をもっていることです。強迫性以外には⼈格や精神状態には異常はなく、部分的な障害を持ちながらもなんとか社会に適合している⽅が多いと感じます。しかし、このなんとかという部分が患者さんは⾟いわけですね。よくある症状を具体的にあげてみましょう。⾝体に何かばい菌がついている何度も⼿や⾝体を洗い直す、特定のものにさわれない、鍵や⽕の元が⼼配になり何度も確認する、時には出勤途中で不安になり何度も引き返してしまう⼈もいます。作成した⽂書に間違いがあると思って、通常以上に時間をかけて正確性をきそうとしてしまう、何か不吉なことが起こるように思えて、数歩ごとにふりかえったり靴紐を結び直したりと儀式的なことをせずにはいられない、などなど実に多彩な症状と悩みがついてまわります。これらの症状は、脳の帯状回という部位に異常があり、セロトニンという化学物質が不⾜することにより起こると推察されています。脳の機能異常ですから、やはりお薬による治療が第⼀とされます。SSRIという抗うつ薬を使って、不⾜したセロトニンを増やすことが最も有効ですが、反応があまり良くない時は、少量の別系統のお薬を少しだけ付加して反応性を⾼める⽅法もあります。強迫性障害は、以前は⼤変治りにくい病気でしたが、より効果が⾼く副作⽤の少ないお薬の登場で⽇常、社会⽣活にほぼ⽀障が出ない位に改善する⽅が⼤部分です。⼀定期間服薬をきちんと⾏えば、減薬、断薬も可能になる⽅もおられます。症状に思い当たるふしのある⽅は⼀度来院してみましょう。