統合失調症の治療法について(第2回)

 前回は、旧世代の抗精神病薬が1950年代に登場したお話をさせていただきました。
これらの薬はドーパミンという神経伝達物質の流れを遮断することで幻覚や妄想(元来あってはならない異常体験が出現するという意味で、陽性症状と呼びます)を軽減することには⼤きく役⽴ちましたが、副作⽤、特に運動機能を悪化させる、の点で改善の余地がありました。最近10〜20年間の神経科学の進歩には目覚ましいものがあり、それらの知⾒に基づいて新しい抗精神病薬が登場してきました。今回はこれらの薬の話です。

 新しい抗精神病薬(新規抗精神病薬)は、いずれも以下の目標を達成するために開発されてきました。1)効果の改善 2)副作⽤の軽減 3)患者さんの社会復帰を助ける、などです。1)に関してですが、陽性症状だけでなく、ひきこもりや意欲の低下(元来あるはずの機能がなくなるという意味で、陰性症状と呼びます)、抑うつや不安などの感情⾯の症状などにも効果を表すように⼯夫されています。最近では、統合失調症の中核的症状である認知機能障害(これについては3)にも⼤きく関係するところなので、次回解説します)に対する効果も研究されています。副作⽤に関しては、運動系の副作⽤は⼤きく軽減され、患者さんのQOL向上に⼤きく役⽴ったわけですが、⾼脂⾎症、糖尿病、肥満などの⽣活習慣病に関係する新たな副作⽤があることがわかり、その対策を早期に⾏うことが望まれています。

 現在、⽇本で使われている新規薬には、リスパダール、ジプレキサ、セロクエル、ロナセン、ルーラン、エビリファイ、クロザリール(いずれも商品名です)などがあります。いずれもドーパミンだけでなくその他の神経伝達物質の流れを調整することで様々な効果を発揮します。各々の薬剤には特徴があり、患者さん⼀⼈ひとりで反応性も異なりますから、主治医の先⽣とよく話し合って、最も効果があり副作⽤の少ないものをじっくりと時間をかけて選びぬいてゆくことが⼤切です。