寝溜めは健康に悪い︕気をつけましょう。

「休⽇に寝だめ」は危険で絶対NG︕⼼筋梗塞や脳卒中の恐れ寝不⾜のほうが健康的︕

 11⽉18⽇、アメリカの学術誌「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」オンライン版に、「『習慣的な睡眠』を変化させると、⼼⾎管疾患や糖尿病などの⻑期的な健康問題を喚起する恐れがある」という研究結果が発表された。

 同研究では、⽶ピッツバーグ⼤学の研究グループが447⼈の健康な中年層を対象に7⽇間、健康状態と睡眠習慣や⾷⽣活を調査した。その結果、いわゆる平⽇の睡眠スケジュールを休⽇も持続している被験者は1⼈もいなかったという。被験者の約85%が休⽇は通常より遅くまで寝ており、平均44分間⻑く寝ていたようだ。

 そして、同研究によると、平⽇と休⽇の睡眠スケジュールの変化が⼤きければ⼤きいほど、代謝系の健康問題への影響が⼤きくなるという。睡眠スケジュールの違いが、⾎中脂質の増加やBMI(肥満度)の上昇、HDLコレステロール(善⽟コレステロール)の減少などと⼀致しており、この相関関係は、運動やカロリー摂取量、飲酒など、ほかの健康要因を調整した後も変わらなかったという。

 平⽇の睡眠不⾜を補うために、週末は⻑く眠る――。このような毎週の睡眠スケジュールの変化は、体内時計を狂わせることにつながり、健康問題を引き起こす恐れがある、と同研究グループは推測している。

 睡眠時間の変化が健康に及ぼす悪影響について、新潟⼤学名誉教授の岡⽥正彦⽒は以下のように語っている。

「昔から、健康の維持には『恒常性』が⼤切だといわれてきました。⼈間は、体内環境を⼀定に維持して初めて、健康が保てるようにできているということです。そして、そのためには、環境や習慣、⽇々の⽣活リズムが⼀定でなければなりません。

 最近、この恒常性の⼤切さを⽰す研究が多く⾏われています。例えば、アメリカで⾏われた調査によれば、『寒冷地』に⽣まれ育った⼈が『暑い地域』に移住する、あるいはその逆の場合、健康寿命(介護などの必要がなく、健康的に⽇常⽣活を送れる状態)が少し短くなってしまうそうです。

 また、ドイツの調査では、夏と冬で時計の針を遅らせたり進めたりする、いわゆる『夏時間(daylight saving time)』を実施している地域で、⼼筋梗塞の発⽣率が少し⾼くなっていることもわかりました。また、睡眠障害も起こりやすくなるようです」

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●⼀番健康な睡眠時間は6時間︖

 環境やリズムが変化することによって、体内に⼤きな変化が表れるようだ。また、睡眠と健康の関係性について、岡⽥⽒⾃⾝も⼤規模な学術調査を⾏ったことがあるという。

「検査法の進歩により、今はエコー検査で簡単に動脈硬化症の判定ができるようになりました。そこで、この⽅法を使い、⼈間ドックを定期的に受診している2214⼈の協⼒を得て、睡眠時間と動脈硬化症の関係を調べたのです。

 それによって、意外な事実がわかりました。最も健康的だったのは『1⽇の睡眠が平均6時間』の⼈たちで、それ以上寝ている⼈たちは、動脈硬化症になる割合が明らかに⼤きかったのです。逆に、寝不⾜の⼈たちは意外と健康的で、動脈硬化症も少ないことがわかりました。動脈硬化症は、⼼筋梗塞や脳卒中などのもとになる状態です。したがって、それらの病気は⽣活習慣と直結していることになります。

 つまり、健康のためには睡眠や⾷事などの⽣活リズムを毎⽇⼀定に保つことが⼤切であり、たとえ休⽇でも、ダラダラ寝過ごしてはいけないということです。いわゆる『寝だめ』も、無意味どころか逆効果だったということですね」(岡⽥⽒)

 多忙なビジネスパーソンにとって、休⽇の朝ぐらいはまどろみの中で過ごしたいものだ。しかし、その誘惑を断ち切り、目が覚めたらサッと起きることこそが、健康への近道のようだ。