日別アーカイブ: 2016/06/11

Hedwig, Angry Inch

今回はタイトルの映画のご紹介です。
ベルリンの壁崩壊前に、東ドイツで抑圧された生活を送っていた一人の性同一性障害の男性が、駐留していたゲイのアメリカ人兵士に連れられてアメリカに亡命するのですが捨てられてしまい、音楽、それもハードロックで身を立ててゆきます。そうしているうちにベルリンの壁が崩壊し、自身の国籍の同一性さえ失ってしまいます。それでも音楽を通した表現の中から次第に自分のあり方を見出し、また他人の同一性さえも肯定するように変化してゆきます。性同一性障害の問題を抱えている人、かれらを理解したい人は是非一度ご覧になってください。音楽もとってもいいですよ。ちなみに主人公は監督も努めていて、ドイツ駐留アメリカ軍司令官のご子息でもあります。
ちなみにangry inch とは整形手術に失敗して1インチだけ残ってしまった、男性器のことです。

医療従事者への暴力

 嫌なタイトルですが、医療従事者に対する職場での暴力について、英医学誌「NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE」 が記事を掲載し、話題になっています。アメリカの医療従事者を対象にした調査で、他の職種と比べて医療従事者は職場で身体的暴力や言葉による暴力を受ける頻度が高く、その多くが患者や来院者による暴力だったと報告しています。特に救急医療の従事者や看護師、精神科の医師などが暴力を受けやすい立場にあるようです。
 
 日本でも同様の調査が行われ、全体の半数近く、47%が「過去1年間に職場で身体的な暴力や言葉による暴力を受けた」と回答しており、医療従事者にとって、暴力が身近な問題になっていることが改めて浮き彫りになりました。

 職種別に見ると、NEJMの記事同様、患者と接する時間が長い看護師で、暴力を受けた人の割合が高く、64%を占めました。中でも「言葉による暴力」が44%を占め、「身体的な暴力、言葉による暴力」の両方を受けた人は14%で、他職種よりも大幅に高い割合となりました。医師では、開業医よりも勤務医の方が6%ほど、暴力を受けた人の割合が高いという結果になりました。

 暴力の行為者は、「患者」が最も多く、「患者の家族」が続きました。3番目に多かったのは「職場の上司」。「職場の同僚」から暴力を受けたという声も少数派ですが、ありました。

 精神科医である私もこれは他人事ではありません。私の親友は、妄想を抱いて診察室を訪れた患者さんに柳葉包丁で頸部を刺されて死亡しました。診察室は血の海となったようです。机が壁にくっつく形でおかれており、患者さんが入口側に座るので、立ち上がられた場合にもう逃げ場がなかったという病院側のミスでもありました。私の唯一の体験は、病棟の廊下を歩いているときに、患者さんから洗面器で頭をたたかれたことです。幸い洗面器がプラスチックであったため、ポコッと音がしただけで、ドリフターズのようなことにすらなりませんでしたけど。けれども私の印象では、精神科の患者さんには他科の患者さんより心優しい人が多いように思えます。