日別アーカイブ: 2016/05/21

イライラの虫

皆さんは、トキソプラズマという寄生虫をご存知でしょうか?ネコの糞や十分に加熱調理されていない肉の中にみられる寄生虫で、人類の約3分の1が感染しているといわれていますが、ふつうは感染しても重度な症状を引き起こすことはないとされています(重症化するのは、新生児や免疫不全患者のみ)。頻回かつ衝動的に、状況に釣り合わないほどの言語的・身体的な攻撃性を爆発させる精神疾患に間欠性爆発性障害という病気があります。最近の米国シカゴ大学の研究によれば、間欠性爆発性障害をもつ患者さんにはトキソプラズマ原虫の保有率が2倍以上高いことが示されています。この寄生虫に感染しているか否かは、血液中にある抗体を調べることで分かるのですが、トキソプラズマ抗体陽性率は、間欠性爆発性障害群では22%、対照群ではわずか9%であり、 抗体陽性の対象者では、怒り・攻撃性のスコアが有意に高かったとのことです。怒りや攻撃性の問題を抱える人たちの一部には、単なる性格の問題でなく、このような生物学的理由のある人たちがいる可能性があります。この寄生虫が胎児期に感染すると統合失調症の発生率が高まることを指摘している研究者もいるくらいです。感染を防ぐ手段としては、ネコの飼育は屋内でおこなうこと(屋外で感染して持ち帰ることがあるので)、ネコの糞に触れないよう注意すること、肉類は十分に加熱することなどが重要です。