風俗嬢の支援

警察白書によれば、現在風俗で働く女性は全国で約30万人おり、特に目立つのが、2010年以降増加傾向にある「無店舗」型の風俗店、いわゆるデリヘルだそうです。ホテルや自宅などで客と会う派遣型風俗のことで、店舗はいらず客も気軽に利用できるため、あらゆる場所で性的サービスが受けられるようになっています。そこで働く女性たちは、もちろん自ら進んでという人もいるでしょうが、多くは家族を養うため、借金や奨学金を返済するためというやむおえない事情からその道に進まざるをえなかった人たちです。これらの女性たちには、性病はもちろんのこと発熱や嘔吐、下痢などの体調不良、うつ、不安、不眠、過食や自傷行為などの精神症状を抱えている方を多く見かけます。 また、知的に低いために、職を離れて生活保護や母子家庭を申請したいがどうやったらよいか分からない、望まない妊娠を誰にも言えずに出産、さらなる貧困に陥る人たちもいます。多くの女性がぶつかるのは40歳の壁で、それを境に収入は激減することが多く、転身しようにも履歴書に空白期間が存在するために、それが困難であることもよく見かけます。東京にある一般社団法人「Grow As People」(GAP)では、風俗以外に職業経験が乏しい女性たちに、職業的技能を身につける場を提供し、彼らに「セカンドキャリア」をつけさせるために活動しています。その特徴は、風俗の仕事を続けながら、仕事の合間でITや接客方法などのスキルを、GAP内や一般企業内のインターンシップを利用して習得していくところにあります。風俗嬢たちは社会から隔絶されており、そのため自己肯定感が持てずに次の一歩に踏み出せないでいるのです。このような活動が夜の仕事から昼の仕事への懸け橋となり、彼女たちが再び堂々と社会の中で活躍できるようになるとよいと思います。当院でも多くの風俗嬢の方の精神症状を診ていますが、病気だけでなく、このような生活支援、福祉的支援まで踏み込んで包括的な治療を行うことが必要と感じています。幸い、札幌には多くの就労支援センターや作業所があり、職業につくための援助を熱心に行っています。それらの施設と連携することで、多くの女性の社会復帰に役立ってゆきたいと思っています。