月別アーカイブ: 2016年2月

うつ病の病前性格

うつ病の患者さんには、病前から特徴的な性格傾向が存在するとこがわかっていますし、日々臨床をやっているとなるほどと頷かせることと多く出会います。うつ病の治療は、抗うつ薬が主体ですが、このような性格特徴を正確に把握することで有効な精神療法が可能となります。
では分かりやすくリストアップしてみましょう。
1) 執着気質
物事や対人関係のささいなトラブルにとらわれ、融通性が乏しく、いつまでも嫌な感情をひきずってしまう性格です。
2) 過度の協調性
他人の評価が気になり、自己主張が苦手な性格です。常に他人の顔色ばかりを伺うのでとても疲れやすくなりますが、特に仕事などでミスをおかした時などに「自分のせいだ、人に迷惑をかけてしまう、申し訳ない」と自責的になってしまうことが多いです。また、明らかに相手が悪いのに、その人に意地悪なことを言われるともしかして自分にも非があるのではと勝手に考えてしまいます。
3) 強迫性
自分は絶対にこうあるべき、なぜ他人は自分の思う通り行動しないのだろうと考えて続けてしまいます。自分の理想なんてその通りに実現することはまず起こり得ませんし、ましてや他人が自分の考えた通りに行動してくれるはずがないので、このような考え方は必ず失望や怒りの感情を引き起こします。
4) 没入性
自分の体力、能力を過信しすぎ、自己モニタリングがうまくできず、ついついやり過ぎてしまう人達がいます。当然、過労や気力もすり減ってしまいますよね。
5) 否定的認知
1)から4)の傾向を持っていると、人間は、自己、周囲の環境、将来について否定的に考え出すようになります。否定的認知の3徴といいます。なにもやっても自分はダメ、周りが変わらないと自分も変われない、お先真っ暗、どうせやっても無駄に違いないと思い始めたら、うつ病にすでに一歩足を踏み込んでいるのかもしれません。

ご自分の性格、行動パターンをもう一度おさらいしてみましょう。

強迫性障害について

当院にも多くの強迫性障害の患者さんが治療のために通院されています。
強迫性障害とは、不安障害の一種であり、強迫観念と強迫行為(確認行為)という2つの症状で構成されます。観念とは、どうしてもこうあらねばならない、本当にやるべきことをやれていただろうかなどの考えが浮かんできてそれを振り払えなくなってしまうものです。このような強い観念が不安とともにわいてくるため、その不安を取り除くための何らかの儀式的行為を行わないといけなくなるのですが、これが強迫・確認行為です。非常に特徴的なのが、患者さんは自分の強迫性について「なぜこんなばかばかしいことをしてしまうのだろう」と不合理に感じ違和感をもっていることです。強迫性以外には人格や精神状態には異常はなく、部分的な障害を持ちながらもなんとか社会に適合している方が多いと感じます。しかし、このなんとかという部分が患者さんは辛いわけですね。よくある症状を具体的にあげてみましょう。身体に何かばい菌がついている➡️何度も手や身体を洗い直す、特定のものにさわれない、鍵や火の元が心配になり何度も確認する、時には出勤途中で不安になり何度も引き返してしまう人もいます。作成した文書に間違いがあると思って、通常以上に時間をかけて正確性をきそうとしてしまう、何か不吉なことが起こるように思えて、数歩ごとにふりかえったり靴紐を結び直したりと儀式的なことをせずにはいられない、などなど実に多彩な症状と悩みがついてまわります。これらの症状は、脳の帯状回という部位に異常があり、セロトニンという化学物質が不足することにより起こると推察されています。脳の機能異常ですから、やはりお薬による治療が第一とされます。SSRIという抗うつ薬を使って、不足したセロトニンを増やすことが最も有効ですが、反応があまり良くない時は、少量の別系統のお薬を少しだけ付加して反応性を高める方法もあります。強迫性障害は、以前は大変治りにくい病気でしたが、より効果が高く副作用の少ないお薬の登場で日常、社会生活にほぼ支障が出ない位に改善する方が大部分です。一定期間服薬をきちんと行えば、減薬、断薬も可能になる方もおられます。症状に思い当たるふしのある方は一度来院してみましょう。

DAS BOOT

最近は、時間があると映画などをネットでみています。
今見終わった3時間の大作がDAS BOOTです。第二次大戦中の大西洋でのドイツ潜水艦U ボートの戦いを描いた傑作ドイツ映画です。有名なカールデーニッツ海軍提督が作り出したUボート戦隊は、イギリスの輸送船団に連携を取りながら襲いかかり、一時はイギリスの物資輸送が途絶えるまでの戦果をあげ、灰色の狼、ウルフパック集団として恐れられていました。しかし、対戦後期には駆逐艦の護衛、偵察飛行による反撃で徐々にその勢いを削がれてゆくのです。この映画も対戦後期を描いたもので、獲物の輸送船2隻を沈めるものの、駆逐艦の爆雷攻撃に晒され沈没寸前にまでゆくのですが、何より潜水艦艦内の描写が細かく興味が持てます。狭い、寒い、水浸し、息苦しい、油まみれ、風呂なし、食べ物は保存食、かび臭いなどなど劣悪な環境が実にリアルに描かれています。これだけ極度に最悪な状況を見せつけられると、日常生活で多少嫌なこと、辛いことなどあっても、気にならなくなってしまうように感じました。辛い精神状態をサバイブするには潜水艦映画が心理的、精神医学的に有効であるのかもしれません。皆さんも、ぜひお試しください。

スーパーウーマン症候群

よき妻、賢い母、孝行娘、そして模範的なワーキング・ウーマン…。何人分もの役割を一身に引き受けて、疲れ果ててはいませんか?スーパーウーマン症候群の女性たちは、つねにオーバーワークの状態です。特に完璧主義で他人にものを頼むのが苦手な人は、何もかも自分で抱え込み、あげくの果てに心身に破綻をきたしてしまうのです。

以下の傾向のある人は注意しましょう!
頼まれると、自分の予定より他人の仕事を優先させてしまう。
毎日働きづめで、自分の時間がとれず、休めない。病気以外の理由で休むことはよくないと思ってしまう。
何事も最後までやりとげないと気がすまない。細かいことに気をつかいすぎて疲れることが多い。
目の前にある問題から解決しようとするため、問題が次々と出てきた場合、手を広げすぎて対処できなくなる。
仕事、夫婦関係、育児などすべてが完壁でないと、「自分はダメな人間だ」と思ってしまう。
罪の意識を感じやすい。
体調が悪くても、スケジュールがつまっていても、「ノー」と言えない。
他人に仕事を頼めない。ほかの人に仕事を任せると、自分の思いどおりにできあがっていないと感じる。
つねに家をきれいにしていないと気がすまず、こまごまとした仕事が目についてしまうため、家でもくつろげない。
仕事をしていても家庭が気になり、家でのスケジュールややるべきことをメモに書き留めておく。
夫が自分の考えに少しも気づいてくれないことにイライラしてしまう。
睡眠時間が短く、栄養が偏った食事でも気にならないなど、健康面に気をつかっている時間がない。