日別アーカイブ: 2016/01/01

謹賀新年

皆さん、明けましておめでとうございます。本年が皆様にとって素晴らしい年であることを祈念しております。年頭にあたって、今回は「武士道」について少し述べさせていただきます。
「武士道」という書物、ご存じのとおり今から100年以上前に新渡戸稲造によって書き上げられた本ですね。「武士道」では、文字どおり、武士が重視した伝統的な価値観や行動規範が述べられていますが、その普遍性には大いなるものがあり、今なお時代や国境を越えて読み継がれています。武士道には、それを記した特別な書物は存在しませんでした。元来は日本の風土の中で自然に発生してきた、不文律の「掟」であったのです。新渡戸によってはじめて体系的にまとめられ世に知られるようになりました。新渡戸は「武士道」のなかで、武士が重んじた価値として7つの徳目を説いていますが、最も代表的なものが、「義」「勇」「礼」の3つです。
 「義」とは、「人として必ず守らなければならない道」のことです。徳目の中でも武士によってもっとも重んじられたものです。ここで重要なのは、道を守り正義を追求することは時として理屈に合わない状況を生むこともある、ということです。義をなすことは、「不合理の精神」を生む可能性を秘めているのです。 しかし、それでもなお、義を重んじることは、長期的に見ればその人の徳を高め、他人から信頼され、それを通して社会に貢献することにつながるのです。
 「勇」。恐れることなく敵陣に切り込むことが、武士には求められていたような印象が先行しますが、これは間違ったとらえ方です。勇とは、「義を見てせざるは勇なきなり」という言葉があるように、ただ単に豪胆な行動をとることではなく、「義」に裏打ちされた行動でなければならないのです。向こう見ずな挑戦や後先考えない行動は逆に軽蔑されていました。また、勇とは、どんな困難な状況に陥っても動じない平常心を持てることも意味していました。
 「礼」というと「礼儀」、「マナー」など、儀式的、作法的なことを連想しがちですよね。もちろんそれも大切ですが、「礼」とは「相手の価値は世界中の何物にも勝る」という考え方に基づき、「他者の喜びや悲しみを自分のことのように感じる能力でもある」と述べられています。
 義、勇、礼。この三つを頭において実行を心がけるだけで、人の生き方はずいぶん変わってくると思いませんか。人と争ったり傷つけ合うこともことなく、「武士道」の格言、「最善の勝利は血を流さずに得た勝利である」を目指して己を律してゆく一年にしたいものですね。