日別アーカイブ: 2015/12/24

四苦

今日は、小津安二郎監督の「東京物語」をテレビでやっていて久しぶりに観ました。私は、小津の大ファンで全作品を観ていますけどやはりこの映画が最高ですね。広島の尾道から老夫婦が東京で働く子供たちに会おうと上京するのですが、子供達は皆それぞれの生活に精一杯で、かつ自己中心的で、戦死した次男の嫁(先日亡くなった原節子が演じています)だけが、優しくもてなしてくれるのです。旅行から戻り、母親は脳卒中で亡くなるのですが、子供達は、その葬式の場でさえ、母の絣の着物が欲しいとか、仕事もあるからと父親をほったらかしにして帰ろうとするのです。映画の最後のほうで一番下の娘が、他の兄弟の仕打ちに涙してこの嫁に訴えるのですが、それに対して「世の中は嫌なことばっかり、でも仕方ないの、みんなそうなるの」と答えさせています。それをみて、ああなるほどなあと今日は思えました。人間がオギャーと泣きながら生まれてくるのは、この世を生きることは辛いことばかりだからなんです。この世では、生、病、老、死の、四苦に人間はいつも苦しめられていますよね。つまりこの世自体が全くの地獄なんです。我々は、それを悟った上でマイナス思考から始めることで、何とかこの人生をねじ伏せて生きてゆくことができるのです。地獄であることを深く認識できれば、他人の小さな親切や導きにたくさん感謝することができて、その光を頼りとして進んでゆけるのです。明日も地獄が待っていますように!

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最近の本

五木寛之の大河の一滴、お勧めします。
人間は、皆大河を流れる水の一滴である。ある時はゆっくり、またある時は急流となって大海に注ぎ、その水が蒸発して天にのぼり、再び雨となって大河の源に注ぐのだそうです。我々の頭上には、何か、我々人間ごときがジタバタしてもどうしようもない、大きな力が注いでおり、全ての人間は、その定められた運命から逃れることはできず、ただただ流れてゆくだけなんですね。ですから、過去や未来にとらわれて、嫌な思い出に怒ったり、起こってもいないことに不安になったりすることは全く無意味で、今を生きるしかないんですね、どんな状況に陥っても。

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