我々は、日常の様々な局面において日々不安というものに直面させられますね。不安のない日はないと言っても過言ではありません。私もクリニックの患者さんのことはもちろん、自分の将来設計のこと、お金のこと(もちろん資産運用などではなく、お金がないことへの不安)、鎌倉に残してきたおふくろのこと、ひいては愛犬の大和君と武蔵君の去勢手術(いよいよ来週です、何しろ玉がなくなるイコール性転換手術でしょ、そりゃ不安ですよ)のことなど様々な不安を抱えて毎日を過ごしています。不安は様々な現れ方をします。動悸、息苦しさや発汗などの自律神経症状、イライラ、パニックなどの感情症状、回避や強迫的になるなどの行為としての変化、自分の身体や感情について過度に心配するなどの認知面での変化などがありますね。でも不安とは本来あって当たり前のものであって、「成功しないと」「間違ってはいけない」などと考える向上心のある人ほど不安は強くなるものです。言ってみれば、不安がなければそれを乗り越えようと努力することもないわけで、それでは人間は進歩しないわけなのです。少し古い例ですか、アメリカとソ連の冷戦時代にはお互いがいつ襲ってくるか不安なのでそれに対処しようと必死になった結果、科学技術が飛躍的に進歩してしまった(どうやら悪い方向へですが)などがあります。しかし、不安も度がすぎるとノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質が変化をはじめ、不安が不安を呼ぶ、へたをするとうつ病になってしまうこともあり、そうなると全く逆の効果しか生まれなくなります。従って、「今、ここで」に集中してベストを尽くすために、不安を適切にコントロールすることが重要になります。薬物に頼らずにセルフコントロールを行う方法が様々提唱されていますが、ここでは自立訓練法をご紹介いたします。自立訓練法とはドイツの精神医学者であるシュルツによって提唱された心身のリラックスを目的とする自己催眠法です。まず部屋の照明を暗くしてゆったりと腰かけましょう。それから「気持ちが落ち着いている」と2-3回繰り返してつぶやいてください。その後、同じことを心の中で数回イメージしましょう。続いて次の6つのステップを順番に行っていきます。いずれもイメージを思い浮かべることで実際の感覚の変化が得られるまで行います。1)手足が重たい(右手、左手、右足、左足の順で)2)手足が暖かい(1)と同じ順で)3)心臓が静かに正しく打っている 4)楽に呼吸している 5)おなかが温かい 6)頭が心地よく涼しい。これらを知覚できたら最後に両手を思い切りひろげたり、背伸びをしたり、深呼吸をしてリセットしましょう。以上を最初は15分くらいかけてゆっくり行いますが、慣れてくると5分くらいでできるようになりますよ。毎日毎日、私たちの脳は動きっぱなしで休まる時がありませんよね。せめて就寝前のわずかな時間でも有効に利用して、忙しい日常から意識を離しリラックスすることを心がけましょう。