まつもとメンタルクリニックの現況

院長松本です。早いもので当まつもとメンタルクリニックが開院してから既に1年が経とうとしています。この間、700人近い新規の患者さんにご利用いただき、その治療に携わらせていただけたことは院長として望外の喜びであります。当初、小規模ではじめたクリニックも徐々に拡大の傾向を見せるようになり、様変わりしてきました。そこで現時点でのクリニックの様子をあらためてご紹介することにいたします。

1.当院で治療可能な患者さん
原則として18歳以上で精神科領域で扱う疾患をお持ちの患者さんであればすべて診察、治療を行います。但し、入院ベッドはありませんので入院が必要な方には旭山病院他、近隣の精神科病院をご紹介いたします。他院から転院をご希望の場合は、必ず紹介状をお持ちください。

2.薬物療法
精神科の一般薬物療法
院長松本はテキサス州立大学(アメリカ)、国立クイーンズランド大学(オーストラリア)、国立シドニー大学(オーストラリア)などで11年半にわたり神経薬理学、神経生化学、脳科学などの研究・教育に従事し、抗精神病薬、抗うつ薬、抗そう薬、抗不安薬、睡眠薬などについて最新の知識に基づく適切な使用(病気にあった、副作用が少なく、かつ最低用量で最大限の効果を得る)に十分な臨床経験を持っています。

デポ剤について
総合失調症の患者さんでは、自分が病気であるとの認識に乏しく(病識がない)、自分で勝手にお薬を中断したり、ご家族がその管理に大変なご苦労を強いられているケースをよく経験します。このような場合に、比較的最近になって副作用が少なく、一回の注射で2~3週間効果が持続する薬剤(デポ剤といいます)が開発されました。当院では他院に先駆けてこの治療法を導入し、今までに60~70例の患者さんで良好な経過が得られております。

漢方薬の精神科治療への応用
クリニック開院前から精神科臨床の現場で漢方薬(エキス剤)の応用については考えていて、開院と同時に西洋薬とうまく合わせながら処方して、患者さんたちには大変喜んでももらっています。現在対応できる病態は、胃痛、胸焼け、便秘、下痢、過敏性腸症候群などの消化器症状、月経前緊張、月経困難症、更年期といったいわゆる血の道の障害、うつや不安気分、慢性の頭痛や肩、背中の凝り、こむらがえり、低気圧などに左右される抑うつ気分、さらには西洋薬の量を減らしたり、副作用の軽減にも役立っています。漢方薬を適切に用いると西洋薬では治らなかった症状もきれいに取れることが多く、処方を希望される方が多いようです。

3.各種の検査について
当院の入っているビルには、MRIやCTなどの医療機器を持ったクリニックがあり、同じビル内で可能ならその日のうちに検査が受けられます。脳の画像診断は、特に比較的高齢になってから精神症状が出現した場合の脳内病変の検出や、認知症の患者さんの経過を追えるので大変便利です。脂肪肝など生活習慣病のある方には腹部のCTで確定診断をお勧めします。たかが脂肪肝といっても、がんや肝硬変になる確率は上がりますので、定期的に検査を受けましょう。

初診時はもちろん、長くお薬の服用が必要な方には3か月に一度の一般血液検査を行います。精神科薬の安全性は大きく向上したとはいえ、副作用を慎重にモニターする必要があるからです。また、初診時には必ず甲状腺(首の前にある内分泌器官)の触診と甲状腺ホルモンの値を調べます。このホルモン量が低下しても増加しても精神症状、特に気分には大きな影響があり、その場合気分安定薬だけでは効果がないからです。このように身体の病気が一義的なもので精神症状が出ている場合がありますから、入念な身体検査が大変重要なのです。

4.当院スタッフ
医療事務の資格を持った精神保健福祉士が、様々な行政、福祉制度をご紹介し、病気療養の社会面からの援助をさせていただきます。
当院の精神科看護師は、もっとも重病の患者さんが緊急入院する急性期病棟での経験が長く、適切な患者さんへの対応を行うことができます。
いままでの患者さんもスタッフとは大変打ち解けて、リラックスしてくれています。

5.心理業務
臨床心理士によるカウンセリング、認知機能(注意、記憶、前頭葉機能など)の評価、さらには病気によって衰えた認知機能を向上させるためのトレーニングをおこないます。まだ週半日(水曜日の午後)のみですが、来年以降増やしてゆくつもりです。

6.女性を対象にした集団精神療法
地域のNPO法人で女性支援を強力に推し進めておられる高名な精神保健福祉士の先生においでいただき、病気の症状はおさまったが、なかなか社会復帰にいたらない方を対象として8~10人の小グループでミーテイングを行っています。現在は週一回(1回90分)、全部で8回を1クールとして行っており、患者さんの精神力の活性化に役立っています。来年はさらに拡張することも考えております。

7.訪問看護
気分障害や統合失調症は、脳を犯す病気ですから様々な精神症状だけでなく日常生活を送る面でも大変な困難を伴います。クリニックの診察だけではとてもその全体像を把握して診療に役立てることは困難です。当院では、精神科を専門とする訪問看護ステーションとの関係を緊密に保ちながら、患者さんの日常生活、自己管理が少しでも向上するように努力しています。

「最後に」
いかがでしたでしょうか?少しでも当院の活動が皆様に伝わるように書いたつもりですが、何か疑問点やお受けになりたい検査や治療法がありましたら、来院時または当院までお電話(011-756-6000)をいただければと思います。

来年はさらなる飛躍の年として患者さんと、あるいはそのご家族と一緒に歩んでゆけるクリニックを目指したいと思いますのでご協力よろしくお願い申し上げます。