院長、松本です。前回漢方薬についてこのブログで触れたのは開業して6週間目でしたが、あっというまに6か月が経ってしまいました。この間、うつ病、躁うつ病、統合失調症、社会不安障害、パニック障害、適応障害など実にたくさんの患者さんを診察させていただきました。そんな中で漢方薬使用の機会がさらに拡大してきましたので、今回は精神科クリニックでよくみられる体の症状に効果のあるものの中で、桂枝茯苓丸という漢方薬をご紹介いたします。
桂枝茯苓丸は、女性の患者さんを中心に最近よく処方しています。血液の流れの悪さ(瘀血=おけつ、という状態)を改善する活血化作用を持ち、駆瘀血剤(瘀血を駆逐するという意味)と呼ばれます(他にも何種類か同様の漢方薬があります)。
様々な状態で瘀血状態が引き起こされますが、よくみられるのは動悸、月経前の緊張状態(うつ的になったりイライラしたりします)、月経困難症や月経痛、さらにはいわゆる更年期障害(うつ、ほてり(特に上半身の)、発汗、冷え(特に下半身の)など)です。桂枝茯苓丸は、活血化作用によりこれらの症状を改善します。
躁うつ病、うつ病などの気分障害を持つ患者さんでは、イライラやうつの症状が月経の周辺や更年期に悪化しやすく、時には自殺などの深刻な問題行動に発展することもよくみられるので、向精神病薬に加えて本剤のような漢方薬をうまく併用して、心身両面からきちんと治療することが重要です。当院では初診の段階で必ず月経関連の症状について問診したり、瘀血の証(瘀血を示唆する身体症状、特に右前腕の圧痛点)について必ず確認をおこなって、治療薬剤の選択に役立てています。