開業して6週間が経とうとしています。その間、90名以上の患者さんが新たに受診されました。この方々は前任地の旭山病院で診ていた患者さんとはだいぶ異なり、以下のような病態、症状を呈する方が多いようです。診断名としては、うつ病、不安障害、パニック障害、適応障害など、症状として多いのが気分の落ち込みや気力低下、息苦しさや胸がつまる感じ、動悸、過呼吸発作、冷汗、思考の混乱、著しい恐怖感(気が狂うのではないか、死ぬのではないか)、イライラ、抑えがたい怒りや恨みの感情、不眠などが見られます。治療として抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬を用いますが、最近ではそれらに加えて漢方薬を処方することが増えています。それによって薬の量を最低限に抑え、副作用の少ないより安全な治療が可能になります。また、漢方薬には、西洋薬では改善しにくい漫然とした症状を劇的に改善して患者さんから大変喜ばれることもあります。上記の症状に対してよく使っている漢方は以下の通りです。
紫胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
うつ傾向が長引いていて、体力的にも弱っている方に使います。
紫胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
動悸、息苦しさなど不安症状が中心で、比較的体力のある方向きです。男性に多く処方します。
桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
紫胡加竜骨牡蠣湯と同じですが、体力のない方、特に女性向きの薬です。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
不安症状のひとつとして、のどがつまる、胸が重苦しく違和感が強い場合に使います。
劇的に改善することが多いです。
抑肝散(よくかんさん)ないし抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
他人から理不尽な扱いを受けて、いらいらや怒りのおさまらない方の気持ちを安定化します。
ご存じのように漢方には様々な種類のお薬があります。精神疾患のみならず身体の病気の治療にも使いこなせるようになりたいものです。